参照元閲覧機能

WISS2009にて、サンプリング書道の参照元閲覧機能についてポスター発表をしてきました。


[発表論文]
http://www.wiss.org/WISS2009Proceedings/posters/paper0077.pdf


この機能は、サンプリング書道において「何をサンプリングしたか」を明らかにするためのものです。

例えば音楽のサンプリング楽曲の場合、元ネタとなった楽曲のことを知っていて聞くのと、知らずに聞くのではその楽曲に対する印象や興味の持ちかたが全く変わってきます。
元ネタとなる楽曲が持つ時代背景やメッセージをよく理解した上で、それを取り入れたサンプリング楽曲を聞けば、きっと印象は変わるはずです。

このような元ネタから受ける影響をサンプリング書道にも取り入れようとしたのが、今回の「参照元閲覧機能」です。

この機能はとてもシンプルで、描画済みの画像の上でマウス操作をして、サンプリングしたモデル画像を表示させます。

たとえばこの画像の例では、「道」という書のモデル画像をサンプリングして円を描画後、その円の上で参照元画像である「道」を表示している例です。

これにより今まではサンプリング作品を見ただけでは、何によって描かれたか分からない状態であったのが、はっきりと参照元を明らかにすることができました。

このように、もともとは鑑賞者の閲覧体験を充実させる事を目的としていたのですが、制作者側にもこの機能による影響が現れました。

この作品は参照元閲覧機能を実装後に作られた作品です。
このサンプリング作品は何もしない状態では「政」という字しか確認できず、それがどのような書をサンプリングしたかということは分かりません。

しかし、参照元を表示すると「金」という字によって描かれたことが分かります。このことにより「金」と「政」という組み合わせからくる文脈、さらには参照・被参照という関係からくる文脈が作品に生まれます。

これまでのように、モデル画像のもつヴィジュアルのみを複製するのではなく、モデル画像の持つ意味やメッセージをも複製する表現が可能となりました。